いつも昇段級審査会では、さまざまなドラマがあります。
師範・指導士の懇親会は、いつもそんなドラマをお酒の肴にしています。
試験会場で緊張してしまい、試験を受けられない子。
後輩の審査を応援するために会場まで足を運んでくれる子。
自分は認められず、受けられないけど受審する仲間を応援する子。
練習に来れない時があり、ほかのスポーツに打ち込む時があり、
それでもこつこつと続けてやっとの想いで受審する子。
誰よりも最初の級を受けるのに時間がかかって、
少しずつ空手が好きになって、ついに黒帯を受審する子。
長久手支部始まって以来、最年少で黒帯を目指す子。
常心門女性の持つ、つましく凛たるものを身につけつつある子。
子供だけではありません。
子供のサポートをする立場で空手に励む人。
子供の見本になればと空手に励む人。
子供と共に学ぶために空手に励む人。
60の手習いで始めた空手が生きがいとなり、挑戦する人。
親子のドラマもありました。
単身赴任で離れた時もお父さんは他の支部に通いました。
お父さんがいなくても、さみしいけどこつこつ続けました。
乗り越えて、6年間の時を経て、一緒に黒帯。
40歳から初めて、ここまで来るとは思っていなかったでしょう。
命にかかわる大病をして、空手ができなくなる事も考えたでしょう。
一方で、小学生で一緒に空手をしていた仲間もやめていく中で、さみしい想いもあったでしょう。
陸上で疲れて、練習に行きたくない時もあったでしょう。
大学受験という人生の大きな試練もありました。
13年の時を経て、すべてを乗り越え、親子そろって大きな挑戦。
立派でした。
昇段・昇級の挑戦は、上に行けば行くほど、壁は高くなっていきます。
いきなり高い壁は登れません。
少しずつ少しずつ、高い壁に挑戦していきます。
最初は登れそうにない、上の見えない壁でも、
一つずつ越えていくとだんだん手の届きそうなところに近づいてきます。
必死で登ったその先に、
別の新しい世界が待っています。
成長が待っています。
私は今回、私自身が受審者の壁として、挑戦を受ける機会をもらいました。
「あきらめるんじゃない」
「下を向くんじゃない」
「こわいものから目をそらすんじゃない」
そして武道空手の一端を、伝えることができたでしょうか?
私が多くの先生たち、先輩たちから、
言葉ではなく、戦いを通して伝えてもらった大切な事。
きっと、これからの人生で壁を乗り越える時に心の支えになる事。
継がれていきますように。 (文:水田洋平)